【特別企画】3・11から9年――記憶と記録
記憶を伝承し、「次の災害」に備えるために。アンドルー・ゴードン
被災者の目に映る九年目の景色。鎌田實
復興とは一人ひとりの「心」が再生すること。小松理虔
被災してわかった食事の大切さ。ウオズミアミ
【特集】世界の中のニッポン
新型コロナウイルス――何が起こっているのか。安田峰俊
ボートピープルが開いたベトナム料理店の40年。高橋幸春
未知なる海への挑戦――篠遠博士を偲んで。飯田裕子
【対談】渋沢栄一が現代に語り掛けるもの。渋澤健×岡本三成
「野村克也」は日本の野球をどう変えたか。二宮清純
【人間探訪】河合美智子
むしろ、「脳出血、ありがとう」という気持ちです。
【連載対談】ニッポンの問題点28
「わからない」から一歩踏み出す――温暖化対策のいま。
江守正多×田原総一朗
連載ドキュメンタリー企画112
民衆こそ王者――池田大作とその時代 未来に生きる人篇15
【特集】人材の大城「熊本」
大西一史/田嶋幸三/原田信志/久我彰登/北村直也/
山田一隆/笠岡俊志/姜 尚中/コロッケ
【ルポ】中村哲さんがアフガンに遺したもの。粟野仁雄
【ルポ】佐賀・鳥栖いじめ訴訟――被害者が語る苦しみの日々。(下)
渋井哲也
ナショナリズムが政治問題に与える影響。
大嶽秀夫
第6回 読者手記発表! テーマ「私の宝物」
●好評連載●
寄せ場のグルメ9 高田馬場――中国人留学生が集う街。中原一歩
名越康文のシネマ幸福論19 「心」の取扱説明書。名越康文
シルバー・アンダーグラウンド18 孤独死の現場――特殊清掃人という仕事。石井光太
シルクロード「仏の道」紀行 第7回 スバシ故城。安部龍太郎
師弟誓願の大道――小説『新・人間革命』を読む15
「十一月二十八日」の歴史的意義。佐藤優
世界への扉43 習近平政権と新型コロナウイルス。三浦瑠麗
大相撲の不思議52 後の先。内館牧子
★連載小説★
芦東山16 熊谷達也
覇王の神殿19 伊東潤
読者手記大募集!第9回テーマ「家族の物語」
Ushio情報box
暮らしの相談室(貯蓄編)個人向け国債って、どんなものですか?/サトミツの知っててよかった!お掃除豆知識(「セスキ」ってなんだ?お掃除界のスーパースター登場か!?)/シニアのためのスマホ講座(LINEの便利な機能あれこれ)/悠々在宅介護術【車椅子編②】(車椅子を上手に操作したい!)/家計にやさしいエコライフ(機器の設定温度を見直そう)/快適生活ワンポイントアドバイス(花粉から身を守る)/災害列島で生き抜く~本当に必要な防災用品とは?(被災時の明かりの重要性)/美と健康のための新習慣(春の眠気を 寝たままスッキリ)/ナンバープレイス/おいしく食べて健康づくり(便秘予防)/シネマ&DVD/ステージ&ミュージアム/短歌/俳句/時事川柳/最近の気になるMONO(背中の疲れを癒やす)
ずいひつ「波音」
こころを聴く52 和歌と「場」。中西進/ぼくと新宿のディープな関係。松原秀行/言葉でないところで。加藤千恵/奨学金の思い出。秋山千佳/ラグビーと新型コロナウイルスと。山川徹
カラーグラビア
PEOPLE2020/世界のネコたち(イタリア)/ティー・エイジ流カフェ散歩/日本紀行・熊本/シルクロード「仏の道」紀行/
「記憶を伝承し、『次の災害』に備えるために。」アンドルー・ゴードン(ハーバード大学歴史学部教授)
他3本
東日本大震災から9年。ハード面ではたしかに復興は進んできたと実感する。でも「心」の部分はどうなのか。今月号では、被災地にずっと関わってきた医師の鎌田實氏、いわき市に住み情報を発信し続けてきた小松理虔氏、熊本地震で被災した経験を漫画にしたウオズミアミ氏、そして震災の記録を残し、後世に伝えるためのプロジェクトを続けるアンドルー・ゴードン氏の四名に、「心の復興」を中心にお話しを伺った。
ハーバード大学歴史学部教授のゴードン氏は、東日本大震災だけでなく、阪神・淡路大震災、熊本地震といった震災や災害に関するあらゆる情報を集め、デジタル化して広く公開する「日本災害DIGITALアーカイブ」の設立・運用に携わってきた。
ゴードン氏がこのプロジェクトを立ち上げた理由。それは、どれだけ多くの写真や映像があったとしても、そのままでは「記憶の痕跡」としてやがては消滅してしまうからだ。しかしデータベースに集積しておけば、いつまでも「記憶と記録の循環作業」が可能になる。
かつて、津波や震災被害の記録を留める石碑が、三陸地方をはじめ全国各地に建てられた。しかし年月を経るにつれて、そうした教訓や警告を忘れていくのもまた事実。だからこそ、次の災害に備えるために、「記録」をしっかりと保存し、次代の人々の「記憶」にとどめていくことが重要なのだろう。もちろんそれは、苦しい作業でもあるのだが。
今年もまた3・11がめぐってくる。災害大国に生きる我々のメルクマール(道標)として、今月号の特別企画をご覧いただきたい。
「新型コロナウイルス――何が起きているのか。」安田峰俊(ルポライター)
他2本
新型コロナウイルス感染症が、日本と世界をパニックに陥らせている。しかし、ウイルス禍はそもそも中国の武漢から始まった。そこで、『さいはての中国』などの著書があり、中国のいまを報じ続けてきた安田峰俊氏(大宅壮一ノンフィクション賞受賞)に、鎖国状態に陥った中国の現状と、2002年に発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)との比較、また中国当局の隠ぺい体質や習近平体制の揺らぎなど、多角的に論じていただいた。
本稿の中盤からは、日本国内の課題についても言及。特にマスク・パニックが象徴的だが、インバウンドにせよ製造業にせよ、日本の過度な中国依存が今回のウイルス禍で浮き彫りになった。その教訓を今後にどう活かすか、安田氏の提言は重要な示唆に富んでいる。
【追悼企画】
「『野村克也』は日本の野球をどう変えたか。」二宮清純(スポーツジャーナリスト)
2月11日、野村克也さんが亡くなった。スポーツ界特有の根性論とは一線を画し、「野球は科学だ」という思想を実践。選手としても監督しても、数々の記録と記憶、そして後継の人材を多く輩出した野村さん。そんな野村さんへの哀悼の思いを、スポーツジャーナリストの二宮清純氏に語っていただいた。
野村さんの野球理論の原点は、南海ホークス時代の杉浦忠投手に対するコンプレックスではないかと、二宮氏は論ずる。あまりに傑出した杉浦投手を前に、捕手としての存在意義を見失った野村さんは、配給とリードの仕方を徹底的に考えぬき、「キャッチャーはピッチャーをリードするポジションである」という概念を浸透させたのだ。
そのほか、親交の厚かった二宮氏だからこそ語れる野村さんの秘話やエピソード、また野村語録の数々が紹介される。野球ファンはもちろん、あまり詳しくない方でも、在りし日の野村さんを偲びながらぜひご一読ください。
【連載対談】ニッポンの問題点28
「『わからない』から一歩踏み出す――温暖化対策のいま。」江守正多(国立環境研究所地球環境研究センター副センター長)vs田原総一朗(ジャーナリスト)
昨年の台風被害や度重なる異常気象、さらにグレタ・トゥーンベリさんの登場で、注目が高まっている気候変動問題。そこで今月号の田原総一朗氏の連載対談では、国立環境研究所の江守正多氏をお相手に、日本における温暖化対策の現状と国民の意識について語り合っていただいた。
再生可能エネルギーはどうして普及しないのか。なぜ原発をやめられないのか。日本人の温暖化対策への意識の低さの理由は? 「環境問題と経済成長」は両立可能なのか……などなど、論点は多岐にわたるが、特に興味深かったのが江守氏の「夏休みの宿題理論」。曰く、宿題に手を付けないまま夏休みが残り一週間になっても、頑張れば「まだ間に合う」。それと同じで、温暖化対策もあきらめなければ「まだできる」「まだ踏みとどまれる」状況だという。
江守氏の非常にわかりやすい語り口に、一気に引き込まれてしまう。そして、私たちができる「小さな一歩」を考えるきっかけになるはずだ。
【人間探訪】
「河合美智子――むしろ、『脳出血、ありがとう』という気持ちです。」
NHK連続テレビ小説『ふたりっ子』の劇中挿入歌だった「夫婦みち」。河合美智子さん演じるオーロラ輝子が、1997年の紅白歌合戦で熱唱したことを覚えている方もいるはずだ。2020年1月、その河合さんが横浜市で開催された「脳卒中後の生き方を考えるセミナー」で、「夫婦みち」を歌いあげていた。実は河合さん、2016年に脳出血で倒れ、いまも右半身にマヒが残っている。この日はご主人で俳優の峯村純一さんとともに、セミナーの講師として登壇していたのだ。
脳卒中の発症者は年間約20万人、総患者数は約120万人だという。病後は運動機能の低下などが原因で、多くの人が閉じこもりがちになってしまうそうだ。
河合さんも最初は落ち込んだという。しかし夫や家族の支えもあり、むしろ心の障壁や自意識から解放され、病気になる前には知らなかった世界が広がるようになった。そんな河合さんの心の軌跡を描いたルポルタージュは、同じ悩みを抱える方々やそのご家族に、大きなエールと勇気をもたらしてくれると信じている。