大林宣彦(映画監督)「解説」より
手塚さんは初期の頃から、いわゆる歴史上の巨人や、名作物語の中の特異な人物の生き方を、自らのマンガの中で再現してみせることが多かった。あれだけ豊富なアイディアやストーリーを生み出す力のある手塚さんが、わざわざ他からストーリーや人物像を借りてくる必要などなかったはずだから、これは手塚さん自身のそれらの人物への関心、というよりもうはっきり、挑戦であるだろう。
【第三部】
第7章 懲罰/第8章 アッサジの死/第9章 スジャータ/第10章 ルリ王子/第11章 ヤタラの物語
ブッダ関連地図
ブッダの旅の行程図
解説 大林宣彦(映画監督)
【第三部】
第7章 懲罰
デーパは、シッダルタがミゲーラのうみを吸い取っているのを見て、懲罰会議にかけ、地中に埋めた。シッダルタを救い出したのはアッサジだった。命びろいしたシッダルタは、苦行をやめ、アッサジといっしょに修行する。
第8章 アッサジの死
6年の歳月が流れた。アッサジが自ら予言した死の日がやってきた。シッダルタはアッサジを木にしばりつけるが、ネズミが縄を切り、アッサジはオオカミの子が飢えているのを見て、みずから進んでオオカミに身を引き裂かれてしまう。
第9章 スジャータ
シッダルタの受けた衝撃は大きかった。シッダルタは我が身を火に投じたり、イバラの林に入ったりしたあげく、墓場でカラスにからだをつつかせる。
スジャータはシッダルタに愛を告白するが、拒絶されると、ジャングルに入ってコブラに咬まれてしまった。シッダルタはスジャータの中に入り、ブラフマンと再会する。ブラフマンに宇宙の姿を見せられたシッダルタは、生命のかけらを持ち帰ってスジャータを生き返らせた。
第10章 ルリ王子
森へ入ったシッダルタは、大木の下で鳥や虫や草たちに自分の体験したことを語って聞かせた。そこへデーパがやってきて、カピラヴァストウの城がコーサラ国に攻められて降伏したことを知らせる。パセーナディ王は、シャカ族から嫁いできた妃が、実は侍女の身分だったことを知ってしまったのだった。
ルリ王子は、カピラヴァストウへ留学して自分の母が奴隷だったことを知り、国へ帰って母を殺そうとするが、父に止められて母を奴隷部屋へ入れた。
第11章 ヤタラの物語
父がつくった薬を飲んで大きくなったヤタラは、森の奥でとらえたルリ王子が、自分にもスードラの血が流れているというのを聞いて解放し、家来となった。
ヤタラはルリ王子の母に心をひかれるが、奴隷部屋で疫病が流行したため、ルリ王子は奴隷小屋を焼き払うよう命じた。ヤタラは小屋に飛び込んで王子の母を助け出すが、間もなく母は死んだ。
ヤタラはシッダルタのもとへやってきた。シッダルタは「人間もこの自然の中にあるからには、ちゃんと意味があって生きてるのだ、あらゆるものとつながりを持って……そのつながりの中でおまえは大事な役目をしているのだよ」と説く。
シッダルタは、ヤタラに教えたことが自分自身に教えたことに気づき、命のかぎりこの宇宙の中の自分の使命を果たすことを宣言する。ブラフマンが現れ、その悟りを人々に教えつづけるよう語り、そのしるしとして額に聖なるしるしを与えた。