村上知彦(評論家)「解説」より
「ブッダ」は手塚作品の中で、物語の連続した長編としては最も長いものだ。手塚さんが亡くなってから、少年まんがが描きたいというあの言葉を、何度となく思いだす。八〇年代の手塚作品には、少年向け長編の代表作といえるものはない。七〇年代後半の「三つ目がとおる」や「ブラックジャック」も、短編ないし中編の連作だった。その意味では「ブッダ」は手塚的な緊密な全体性と物語性を残した、最後の少年向け長編だったといえるのではないだろうか。
【第二部】
第3章 奔流/第4章 ヤショダラ/第5章 ミゲーラ/第6章 四門出遊/第7章 ラーフラ/第8章 五人の行者
ブッダの旅の行程図
解説 村上知彦(評論家)
【第二部】
第3章 奔流
タッタはシッダルタを城から誘い出し、船にのせて下流へと下っていった。
盗賊団が襲ってきたがワニに襲われた。シッダルタは盗賊団の首領が女だと知って、タッタに助けさせる。首領がアリの巣に落ちると、シッダルタはタッタに首領を救い出させた。女はミゲーラと名のった。
捨てられたおばあさんの死を見て、シッダルタは城に帰りたくなった。
第4章 ヤショダラ
城にもどったシッダルタは、病気になった。6か月と6日のあいだ、生と死の間をさまよう。その頃から、シッダルタの心の中にある決心がかたまってきた。
スッドーダナ王と王妃はシッダルタをヤショダラ姫と結婚させようとする。
シッダルタは、むこ選びの儀式で申し込みのあった者と戦って勝ったら結婚すると宣言。バンダカが名乗りをあげた。
第5章 ミゲーラ
シッダルタを愛するミゲーラは、男装して技くらべに名乗りをあげた。武芸競技が始まり、鳥に乗りうつったタッタは、ミゲーラを勝つように仕向ける。
しかしミゲーラが女であるとわかり、スッドーダナ王はミゲーラを殺そうとした。シッダルタはヤショダラ姫と結婚するかわりに、ミゲーラを許してやってほしいという。王はミゲーラを許すが、目をつぶした。
第6章 四門出遊
シッダルタとヤショダラ姫は結婚した。コーサラ国のパセーナディ大王は、シッダルタの身内の王女を妃によこせといってきた。パセーナディ大王は王としての品位にかけていた。そこで隣国のシャカ族から王族の娘をひっぱってきて妃にしようと思ったのだった。
シッダルタのもとへ謎のバラモンが現われて、砦の廃墟につれていく。東の門をくぐると年寄りがいた。南の門をくぐると病人がいた。西の門をくぐると死人がいた。北の門をくぐるとバラモンがいた。バラモンは、シッダルタに「あなたが選ぶ道はそれしかないのじゃ」という。
スッドーダナ王は侍女のひとりを王女にしたててコーサラ国へ嫁入りさせる。1年たって王子が生まれ、ビドーダバと名付けられた。
第7章 ラーフラ
タッタはデーパを捕らえた。デーパはミゲーラが目を焼いてごらんというと、みずから目を焼く。デーパはナラダッタの弟子だった。
その年の夏、カピラヴァストゥ一帯は猛烈なモンスーンにおそわれ、疫病と飢饉によって何千人も死んだ。謎のバラモンは「さあ立ちなされ王子よ!」という。
シッダルタは人々を救う道を求めて断食をはじめた。
第8章 五人の行者
バンダカは、シッダルタの苦行をやめさせるために5人の行者をつれてきた。
行者は法術でシッダルタをやぐらからおろすことに失敗するが、シッダルタと問答して「あなたは もしかしたらほんとに世の中を救うおかたかもしれません どうかわれわれといっしょに苦行林へおいでくだされ」という。
シッダルタは立ち上がってやぐらを降り、城から出ていこうとした。バンダカがヤショダラの腕をとる。シッダルタは駆けもどると、ヤショダラ姫をバンダカから救うために、素手でバンダカの剣を奪いとった。そのときヤショダラが倒れた。