日本の近代演劇幕明けの時代、「天才肌」と呼ばれ、活躍した女性がいた!
知らなかった。こんな格好いい人がいたなんて――。
新しい文化が生まれ花開いてゆく東京で、千枝は俳優という天職に出合った。貞(ただし)の<黄金の舞踏>を見て自分も演じたいと強く願った。<演劇と、文学と、芸術がなければ、生きていくことのできない体>となり、貞の背中を押しながら自らも様々な役をまっとうした。女性がなにかを表現すること自体が珍しかった、抑圧されていた時代に堂々と自分の道を歩いた。彼女が切り開いた道の先を、今わたしたちは歩いている。
(解説――北村浩子:書評家、ライター)
1947年、日系二世の野正 琴(のまさ こと)は戦時中に強制収容所で知り合った老女に会うためロサンゼルスを訪れていた。彼女の名は三田千波(みた ちえ)。かつてハリウッドで活躍した俳優で、琴はいつかその頃の話を聞かせてほしいと頼んでいたのだ。千枝が語り出したのは、日本での輝かしい日々のこと、そして――。日本の近代演劇草創期に活躍した一人の女性の波瀾万丈の人生を描く、渾身の歴史小説!