文明と文明、人間と人間を結び、世紀を拓く「対話」
知識と知恵、自由と平等、伝統と近代化、対立・背反しているかに見えるこれらの間にどう橋を架けるか。
池田大作「はじめに」より
この一書が、ロシアと日本の友好を増進するとともに、二十一世紀の「新しい人類」を、そして「新しき世界」を創出しゆく一助となることを、念願してやまない。
はじめに 池田大作
まえがき ヴィクトル・A・サドーヴニチィ
第1章 「知識」と「智恵」を結ぶ橋
ロシアの教育とプーチン大統領
「教育の世紀」を展望して/事故への真剣な対応がリーダーの責務/父親との触れ合いが育んだ学問への興味/知識を知恵と錯覚する現代人の迷妄/真の幸福は他者との「共生」のなかに生まれる/個別性より関係性を重視する「縁起」の思想/人間を人間たらしめる知恵、人格の輝き/豊かな暮らしを生んだ「道具」としての知識
無限の宇宙をめぐる信仰と知性
ロシアの宇宙開発にまつわるエピソード/言語では表現しきれない「無限」「永遠」なる実在/知識を求める心から大学が生まれた/科学では解明の難しい人間の内面世界/「善く生きる」ために不可欠な宗教性、精神性/有限なモデルでは宇宙の無限性を再現できない/生命尊厳の理念を守るための新しい倫理規範/人間精神を腐蝕させるハイテク兵器
「多様性の調和」へ智恵の教育
二十一世紀の理想の大学をめざして/戦争の悲惨さをいかに語り伝えるか/全体的な人格形成に不可欠なコスモス感覚/人間の未来の科学的予測は不可能/科学と非科学的知識、政治との調和/人間としての根幹に関わる「言語の重み」/知恵と知識に関する日本とロシアのことわざ/文化的な違いを超えて「多様性の調和」へ/規範からの逸脱を止める内発的な精神性
第2章 「自由」と「平等」の両立
新世紀の実験―人間革命から社会変革へ
厳しい自然環境とレナ川の氾濫/民衆の交流こそ信頼関係の基盤/社会主義の壮大な実験は失敗だったのか/「勝利」にはほど遠い資本主義の内実/「自由」と「平等」の両立という重い宿題/社会の変革に不可欠な人間自身の内面的変革/自由とは何か、それをどう実現するか/際限なき欲望の肥大化は混乱と悲劇をもたらす
新生ロシアの挑戦ーカオスからコスモスへ
依然として多い「自由」のはき違え/「凶器と化した言論」による卑劣な人権侵害/「民主主義の真髄」にある宗教性、精神性/「結果の平等」のいきすぎが生んだ弊害/自制心の育成に主眼をおいた日本の教育/日本社会に根深い「世間」という集団意識/国際化の潮流と新しい「孤立主義」
未来社会のモデルを求めて―「競争」から「共創」へ
モスクワ大学の学生と江沢民主席の交流/「世界最高峰」モスクワ大学の入学試験/「人道」の名のもとに行われたコソボ空爆/ガンジー主義の中核をなす「強者による非暴力」/「平等」や「公正」に軸足をおいた経済学/「自由」や「平等」の解釈の押し付けはできない/二十一世紀は「資源獲得競争の世紀」に/知的資源の流出は文明に破局をもたらす/「内発性」なくして「平等」の実現はない/学びのプロセスのなかにある自由と平等
第3章 「伝統」と「近代化」の調和
「地球文明」へ―他民族の共生と平和を
「絶対悪」であるテロを根絶するために/世界を席巻した西欧主導の近代化/歴史や伝統が培った人類普遍の英知/「共に生きる」心が内発的な近代化のカギ/急進的な変革は社会に歪みをもたらす/多様解釈が可能な「伝統」と「近代化」/物理的時間と異なる独自の「内的時間」
対話の力―「平和の世紀」を求めて
人類の宿命を転換し「平和の世紀」実現へ/「イソップ物語」に含まれる永遠の教訓/歴史を循環的にとらえる東洋の世界観、宇宙観/循環的時間のなかに流れる秩序への希求/学問全般に戻ってきた「時間」の概念/複雑で予測困難な自然の驚異/人間の過去や習慣は簡単には捨てられない/「ソビエト化」の壁となった伝統的な制度/人間生命の深層にあたる宇宙大の生命次元へ
グローバリゼーションの世界
「今」へのアインシュタインの関心/「現在」とは何か/大胆な問題提起「統計的年表」/将来の文化と伝統のあり方/メガロポリスにおける伝統の適応/寒々とした都市の近未来図/巨大都市における教育のあり方/教育における復元力に期待
注