「ラッセル=アインシュタイン」宣言から半世紀
核兵器と戦争のない未来を築いていくために
第二次大戦中、アメリカの原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」に参加した物理学者と、師から核廃絶の遺訓を託された仏法者との対話は、戦争の廃絶という究極の目的を共有しながら、「不戦の世界」の実現の可能性を探究する。
ジョセフ・ロートブラット「まえがき」より
池田大作氏とともに、私は、道義的で責任ある科学の使用に関する私の経験と確信を次世代に遺贈すべく、その一つの方途として、この対談集に取り組んだのである。
池田大作「はじめに」より
世界の多くの青年が、この書に触れ、博士の崇高な生涯に思いを馳せながら、「核兵器と戦争のない世界」の建設という未曾有の挑戦に、陸続と立ち上がっていかれんことを願ってやまない。
まえがき ジョセフ・ロートブラット
はじめに 池田大作
第一章 ラッセル=アインシュタイン宣言
「核のない世界」「戦争のない世界」へ/2つの「宣言」における「人間性」への視点/「疲れることを自分に許さない」/アインシュタインの苦悩と葛藤/「正義の戦争」はありうるか
第二章 ヒロシマ・ナガサキの「人類への教訓」
広島は人類の「グラウンド・ゼロ」/「8月6日」の衝撃と絶望/中東にまで及んだ反核の運動/過去、現在、そして未来への責任
第三章 反戦精神を培った「師弟の道」
戦争への怒りを刻んだ少年時代/小説が育んだ科学への夢/恩師が支えてくれた“科学の旅”/夫婦を引きさいたファシズムの嵐/亡き妻に捧げた平和への決意
第四章 マンハッタン計画の真実
マンハッタン計画と原爆への恐怖/核抑止論への疑問/困難を極めた「計画」からの離脱
第五章 パグウォッシュ会議の挑戦
パグウォッシュ会議と原水爆禁止宣言の「縁」/東西の壁を超えた科学者たちの対話/不戦への決意と「ウィーン宣言」の採択/人間に潜む野蛮と狂気との対峙
第六章 核廃絶への闘争
“粘り強い対話”こそ、歴史を動かす究極的な“武器”/ノーベル平和賞受賞がもたらした新たな使命感/受賞講演で訴えた「全人類に対する忠誠」
第七章 「核抑止論」という欺瞞
核備蓄の潜在的危険/核の抑止力は機能したか/国際社会の矛盾がテロの温床に/核廃絶こそが現実的な考え/世界の不戦は現実的な選択
第八章 不戦の世界を――国連と世界市民
より民主的な「国連改革」への具体案/揺らぐ国家の枠組みと民衆の「連帯」/「世界市民」としての意識を強化することが根本/「世界政府」実現の可能性/「平和を願うならば、平和の準備をせよ」
第九章 科学者の責任、宗教の使命
現代社会は相互依存で成り立つ/科学の発展と人類の責任/社会の影に教育の光を/人類発展の基礎に生命尊厳の思想を
第十章 後継の青年たちへのメッセージ
人類益の実現へ後継の育成を/楽観主義に脈打つ不屈の信念/生涯青春の心意気と青年に託す思い
発刊に寄せて ロバート・ハインデ
注
ジョセフ・ロートブラット(パグウオッシュ会議名誉会長)
1908~2005年。ポーランド・ワルシャワ生まれ。物理学者。アメリカ政府から原爆開発の「マンハッタン計画」に招かれて渡米。ナチス・ドイツが原爆を製造しないことがわかると、同計画から離脱。戦後の「ラッセル=アインシュタイン宣言」の発表に尽力。「パグウオッシュ会議」会長、名誉会長を歴任。95年にノーベル平和賞を受賞。