映画が娯楽の王様だった時代の熱き照明技師たちの物語。
日本が高度成長期に差しかかろうとしていた「もはや戦後ではない」昭和30年代。
映画会社の助監督試験に落ちた五堂顕は、諦めきれずアルバイトを紹介してもらうために訪れた撮影所で小火(ぼや)を消し止めると、これを機に照明部からスカウトされる。
右も左も分からないまま働き始めた顕は、理不尽な対応にも耐え、失敗を繰り返しながらも、照明の奥深さと魅力を知っていき、技師としての腕を上げていく。
監督、俳優、脚本家、カメラマン、録音技師、そして照明技師。様々なスタッフと彼らを取り巻く人々の人間模様や、撮影現場の臨場感あふれる様子は、読み手を映画の世界へといざなってくれる。
そして物語の終盤、カラーテレビの普及に伴う映画の衰退によって、照明技師たちが迫られた選択とは──。
どこか懐かしく活気に溢れ、元気を与えてくれる、松本清張賞作家渾身の長編小説!